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セクター分析

自動車5社の業績・配当・ROE比較 2026年

日本を代表する自動車メーカー5社(トヨタ・ホンダ・日産・SUBARU・マツダ)について、 2025年度(2025年3月期)の有価証券報告書ベースで売上高・営業利益率・ROE・配当推移・自己資本比率を横断比較します。 EV移行、米中市場の構造変化、為替変動下で5社の業績がどう分化しているかを整理します。

公開: 2026-05-12更新: 2026-05-12読了目安: 約8分

1. 5社の主要指標サマリー(2025年度)

5社の最新2025年3月期決算を一覧します。すべて各社の有価証券報告書および金脈コード上のXBRLデータに基づきます。

企業売上営業利益純利益OMROEPER
トヨタ自動車48.0兆円4.8兆円4.8兆円10%12.9%7.3倍
本田技研工業21.7兆円1.2兆円8,358億円5.6%6.6%7.5倍
日産自動車12.6兆円2,102億円−6,709億円1.7%-12.3%N/A
SUBARU4.7兆円4,053億円3,380億円8.7%12.5%5.8倍
マツダ5.0兆円1,890億円1,141億円3.8%6.3%5.2倍

※ OM = 営業利益率(Operating Margin)。日産のPERは赤字のため算出不能。

2. 売上規模で見る業界構造

5社合計の売上高は約92.0兆円に達します。各社の業界内シェアを視覚化します。

トヨタ自動車
48.0兆円
本田技研工業
21.7兆円
日産自動車
12.6兆円
SUBARU
4.7兆円
マツダ
5.0兆円

トヨタは48兆円と他社を圧倒し、2位ホンダの2倍以上。トヨタ単独で日本のGDP(約600兆円)の8%を占める巨大企業です。 一方、5位マツダ(5兆円)と4位SUBARU(4.7兆円)は規模が近く、両社合計でもトヨタの4分の1以下です。

自動車産業は規模の経済が極めて重要な業種で、開発費・設備投資の固定費を多くの台数で割れる会社ほど競争優位を持ちます。 ホンダ・日産はトヨタを追う立場、SUBARU・マツダは特定の市場・セグメントに特化する戦略を取っています。

3. 営業利益率に表れる収益力の差

営業利益率は本業の稼ぐ力を示す指標です。5社の2025年度営業利益率を可視化します。

トヨタ自動車
10%
本田技研工業
5.6%
日産自動車
1.7%
SUBARU
8.7%
マツダ
3.8%

トヨタ(10.0%)とSUBARU(8.7%)が高収益グループを形成しています。 トヨタは大規模・ハイブリッド技術・グローバル販売網による効率性、SUBARUは北米偏重戦略でブランド力を強みに高利益率を維持しています。

一方マツダ(3.8%)と日産(1.7%)は明確に苦戦しています。 マツダは品揃え不足、日産は市場戦略のミスマッチが背景です。輸送用機器業界の中央値が約5%なので、この2社は業界平均以下になっています。

4. 配当推移と株主還元方針

2023〜2025年度の1株配当の推移は、業績の差を直接反映しています。

企業2023年度2024年度2025年度2年での増減
トヨタ自動車455472+60%
本田技研工業1184666株式分割考慮要
日産自動車51515+200%
SUBARU6686107+62%
マツダ405060+50%

トヨタは2年で60%の大幅増配SUBARUは62%増配と、業績好調を反映した強い増配トレンドを示しています。 マツダも50%増配で業績悪化の最中でも還元意欲は維持。

ホンダは2024年7月に株式分割(1:3)を実施しており、表面的な配当額の比較ではトレンドを誤読しやすい点に注意してください。 分割考慮後ベースでは配当は微増です。

日産は2025年度に巨額赤字を計上したものの、配当は15円で維持。 ただし配当性向は赤字下では算出不能で、来期は減配・無配のリスクもあります。

5. 日産の最終赤字6,709億円が示すもの

日産自動車は2025年3月期に最終赤字6,709億円を計上しました。 これは2022年3月期以来3年ぶりの赤字で、主因は3つあります。

  • 米国市場の収益悪化: 競合のハイブリッド車・SUVに対し、日産の主力車種の競争力低下が顕在化
  • 中国市場のEVシフト遅れ: 中国系メーカー(BYD・Li Auto等)への市場シェア急速な喪失
  • リストラ費用: 9,000人規模の人員削減と工場閉鎖関連の特別損失

ROEは−12.3%と、メガバンクの4.6%(業種中央値)どころか赤字で算出不能水準まで悪化。 自己資本比率も28.6%と5社中最低で、財務余力が削がれつつあります。

ホンダとの統合交渉(2025年初頭)が破談となった現在、日産単独での再生計画が問われる局面です。 投資判断では「将来のV字回復シナリオ」と「さらなる悪化リスク」のどちらに賭けるかの両極端の判断になります。

6. EV・水素・ハイブリッドの戦略分岐

自動車業界は「100年に一度の変革期」と言われるCASE(Connected/Autonomous/Shared/Electric)の真っ只中にあります。 5社の電動化戦略は明確に分かれています。

  • トヨタ: マルチパスウェイ戦略。HEV・PHEV・FCV・BEVすべての可能性を追求。BEV専用工場(メキシコ・米国)も投資中
  • ホンダ: GMとの統合プラットフォーム破談後、独自BEV路線へ。「Honda 0シリーズ」を2026年から投入予定
  • 日産: アリア・リーフでBEV先行も、その後の販売拡大は停滞。米国向け新型BEVが鍵
  • SUBARU: トヨタとの共同開発BEVが主軸。AWD技術と組み合わせたSUVに特化
  • マツダ: ロータリーレンジエクステンダー搭載BEVなど独自路線。BEV専用車種の遅れが市場で評価減

BEV専業の中国系(BYD・Li Auto・Geely)に比べると日本メーカーは保守的に映りますが、 ハイブリッドの利益貢献を維持しつつ次世代技術に投資するバランス型戦略が結果的に有利という見方もあります。 業績の差はこの戦略の妥当性が短期で問われる結果といえます。

7. データの出典と注意点

本記事の数値はすべて、各社が EDINET(金融庁の電子開示システム)に提出した有価証券報告書のXBRLデータに基づいています。

  • 純利益は親会社株主に帰属する当期純利益
  • ホンダの2024年7月株式分割の影響で、2024年度・2023年度の1株配当は表面的に大きく見える点に注意
  • PERは決算期末日の株価ベース。日産は赤字のため算出不能(N/A)
  • 自動車業界は中国市場・米国市場の動向が業績に大きく影響するため、為替・地政学要因で短期的に業績変動が大きい
  • 本記事は事実分析であり投資推奨ではない
本記事は有価証券報告書のデータに基づく事実分析であり、投資助言や個別銘柄の推奨を目的とするものではありません。 投資判断は最新情報を確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。

関連ページ

日本の自動車5社 — 100年の競合史と現在地

日本の自動車産業は1933年のトヨタ自動車創業 (豊田自動織機からの分離独立) を起点に、戦後の高度経済成長期に世界市場への展開を加速しました。1960年代以降、トヨタは「カイゼン」「ジャストインタイム」「カンバン方式」というトヨタ生産方式 (TPS) で世界の製造業の手本となり、現在も世界販売台数 1,000万台超で世界首位を維持しています。 ホンダは1948年に二輪車メーカーとして創業、1963年に四輪参入。創業者本田宗一郎の技術志向で F1 撤退・参戦を繰り返し、独自エンジン技術と HondaJet・eVTOL など新モビリティ事業で独自の立ち位置を築きました。 日産は1933年創業、1999年のルノー・日産アライアンス (カルロス・ゴーン体制) で経営再建。しかし2018年のゴーン氏逮捕、2024年の業績悪化で再び苦境。2025年3月期最終赤字 6,709億円を計上し、構造改革の真っ只中にあります。 SUBARU・マツダは中堅メーカーとして、北米市場特化 (SUBARU) と独自技術 SKYACTIV (マツダ) で差別化を図っていますが、EV 移行の遅れと中国市場の縮小という業界共通の課題に直面しています。

業績を左右する論点 — EV移行・米国関税・為替

自動車セクターでは以下3つの論点が業績を左右します。 ①EV 移行への対応力 グローバル EV 比率は 2024年で約 18%、2030年に 40-50% 予想。各社の EV 投資が業績を左右します。トヨタは多様化戦略 (HV/PHEV/BEV/FCV) で「全方位」を貫き、リコールリスクと開発コスト分散を実現。ホンダは GM 連携で北米 EV 展開を加速、日産は EV リーフの先行者利益を失いつつ再起を狙います。SUBARU・マツダは規模が小さく EV 単独投資は困難、トヨタとの提携拡大で対応。 ②米国関税・地政学リスク トランプ政権下で米国輸入車関税 25% が議論されており、日本車メーカーの北米事業に大きな影響。トヨタ・ホンダは現地生産比率を 70-80% まで引き上げており耐性高い、日産・SUBARU・マツダは現地生産比率がやや低くリスク大。 ③為替感応度 円ドルレート 1円で各社の営業利益が変動 (トヨタ約 500億円、ホンダ約 100億円)。円安は短期業績にプラスだが、長期的には現地生産拡大で為替効果は逓減傾向。

自動車業界の今後 — EV・自動運転・グローバル再編

自動車業界は「CASE (Connected/Autonomous/Shared/Electric)」の同時進行で、過去 100年で最大の変革期にあります。 EV では中国 BYD・テスラ・ヒョンデが急成長、日本勢は遅れを取っています。トヨタは固体電池の量産化 (2027-28年予定) で逆転を狙う戦略ですが、量産技術の確立次第。自動運転では Waymo・Tesla・百度が先行、日本勢は ADAS 領域での競争力維持に注力。 業界再編も進行中: - ホンダ・日産・三菱自の経営統合協議 (2024-2025) は不成立に終わったが、業界再編の必要性は明白 - トヨタを軸とした SUBARU・マツダ・ダイハツ・スズキ・日野・いすゞの広範な提携網 - 海外: ステランティス (フィアット・PSA 統合)、Renault-Nissan アライアンス再編 中長期の競争軸は ①EV 技術 (固体電池、急速充電)、②自動運転、③ソフトウェア開発力、④グローバル販売網 の4要素。日本勢でこの4要素への投資規模が最大なのはトヨタで、他社は提携戦略が業績を左右します。

よくある質問

Q. 自動車5社のうち、どれが一番投資価値が高いですか?

A. 安定性ならトヨタ (営業利益率 10%、世界販売トップ、固体電池研究で長期競争力)。配当狙いなら SUBARU (利回り高め、自己資本比率 53% で財務健全)。リスク許容なら日産 (PER 算出不能だが構造改革成功時のリバウンド余地大)。投資先は自身のリスク許容度と運用期間で選択するのが推奨されます。

Q. 日産の赤字 6,709億円は回復しますか?

A. 回復の難易度は高いです。原因は ①米国市場の戦略商品ライン不在 ②中国市場の急速な縮小 ③リストラ費用集中 の複合。回復には新商品ライン投入 (2026-2027年)、北米・中国戦略の抜本見直し、提携先確保 が必要。自己資本比率 28.6% は危険水域ではないが、5社中最低で財務体質改善も急務です。

Q. トヨタの固体電池はいつ実用化されますか?

A. トヨタは 2027-2028年の量産開始を公表しています。現行リチウムイオン電池より航続距離 2倍、充電時間 1/3 を実現可能とされており、実用化されれば EV 市場で逆転の可能性。ただし量産技術の確立と原材料 (リチウム、ニッケル) 調達が課題で、計画通り進むかは不透明。

Q. 米国関税 25% が課されたら自動車株はどうなりますか?

A. 短期的には大きな売り圧力。試算では関税 25% でトヨタ営業利益 1.5-2兆円減、ホンダ 0.5-1兆円減のインパクト。ただし現地生産比率が高い (トヨタ 70%、ホンダ 80%) ため影響は緩和される見込み。最も影響が大きいのは現地生産比率の低い日産 (45%)、マツダ (一部) です。関税は政治情勢次第で変動するため、長期投資なら一時的逆風と捉える戦略もあります。