データ処理・検証の方法論

金脈コードが公開している財務データ・AI分析が「どう作られ、どう検証されているか」を説明するページです。 運営者は財務データの自動検証をテーマとする博士課程の研究に取り組んでおり、その研究成果(検証パイプライン・信頼度スコアリング・ハルシネーション検出)を本サイトの品質管理にそのまま適用しています。 使い方は金脈コードについて、運営者情報は運営者情報・編集方針をご覧ください。

分析プロセスの詳細

金脈コードは、日本の上場企業が金融庁EDINETに提出する有価証券報告書を独自パイプラインで取得・分析しています。 各社の決算データと定性情報は以下の6ステップで処理されています。

  1. 有報取得:EDINET APIから毎日差分ダウンロード。XBRL(構造化財務データ)とHTML本文を同時取得します。
  2. 財務データ抽出:XBRLから売上高、営業利益、セグメント、B/S、C/Fなど200以上の財務指標を機械的に抽出します。 連結・単体の区別、前期比の自動計算、会計基準(日本基準・IFRS・米国基準)の差異を吸収します。 有価証券報告書(通期)と半期報告書はXBRLコンテキストの会計期間で厳密に区別し、中間期の数値が年度業績に混入しない仕組みにしています。
  3. 定性情報抽出:有報本文から「事業の状況」「MD&A(経営者による財政状態の分析)」「事業等のリスク」「研究開発活動」等のセクションを分離します。
  4. AI分析:ローカル環境で稼働するLLM(大規模言語モデル)が、業績変化の要因・リスクの影響評価・今後の見通しを要約します。 根拠となる文章を原文から引用することで、ハルシネーション(AIの作り話)のリスクを低減しています。
  5. 信頼度スコア算出と品質ゲート:XBRLカバレッジ、引用整合性、数値検証、セグメント整合性の4軸で信頼度を0〜100%で採点し、各レポートに表示します。 さらに公開前に機械検算(配当性向の再計算、キャッシュフローの符号と本文記述の突合、前年比のゼロ割り検出など)と 表現ゲート(AIの定型文・評価的表現の検出)を全社に適用し、検査に落ちた項目は表示しません。
  6. サイト公開:分析結果をJSONに変換し、Next.jsで静的ページとして配信。読み込み高速化のため、企業ごとにデータを分割しています。

独自データ加工の技術的詳細

金脈コードは EDINET・SEC EDGAR・TWSE OpenAPI 等の公開財務情報を 単に表示しているわけではありません。 以下のような独自開発のパイプラインで、生データを大きく加工した上で配信しています。 EDINET ビューアや一般的な財務情報サイトでは取得できない指標を含みます。

1. 自社開発のXBRL抽出パイプライン(204指標)

EDINET の XBRL タクソノミは jpcrp_cor:NetSalesSummaryOfBusinessResults のような会計タグの集合体であり、日本基準・IFRS・米国会計基準で大きく異なります。 さらに業種別の独自タグ(銀行業のjpigp_cor:OperatingRevenue1、保険業のInsuranceRevenueIFRS 等)への対応が必要で、市販ライブラリでは十分にカバーできません。

当サイトでは 業種・会計基準ごとに最適なタグ優先度を組んだ独自抽出ロジックを構築しており、売上高・営業利益・セグメント別売上・配当金・含み資産・支払利息など 204 種類の会計指標を自動抽出しています。 IFRS 採用企業(約 23%)でも国内基準企業と同じ KPI セットを安定して再現できる点が、競合サイトに対する明確な差別化です。

2. 賃貸等不動産注記の独自抽出(693社)

上場企業の有報には「賃貸等不動産の時価」が注記として開示されているケースがあり、簿価との差額(含み益)は隠れた企業価値の源泉です。 ただし日本基準 (JGAAP) と IFRS で記載フォーマットが異なり、表形式・テキスト形式が混在しているため、機械抽出が困難な領域です。

当サイトでは JGAAP・IFRS 双方の記載フォーマットに対応した独自パーサーを開発し、693 社の賃貸不動産注記から「期末簿価」「時価」「差額(含み益)」を抽出して企業ページに掲載しています。 検証では三井不動産(簿価ベース ¥3.37 兆 vs 開示時価 ¥3.6 兆)、三菱地所(¥4.42 兆 vs ¥4.4 兆)、JR東日本(¥1.7 兆 vs ¥1.62 兆)など、大手不動産・鉄道で開示時価との誤差 ±5〜15% を実現しています。

3. 含み資産推計(地価公示・取引価格・用途地域・kNNの統合)

賃貸注記が無い企業についても、有報の「主要な設備の状況」から得られる土地簿価と所在地を起点に、含み資産(時価ベース)を推計しています。 推計には以下の 7 つの公開データソースを統合しており、業界では類例の少ないアプローチです。

  • 国土交通省 L01 地価公示(年次)
  • 国土交通省 L02 地価調査(年次)
  • 国土交通省 XIT001 不動産取引価格情報(リアル取引)
  • 国土交通省 A29 用途地域データ(GIS)
  • Geocoding API による緯度経度変換(成功率 91%)
  • 賃貸等不動産注記(前述)
  • 既存の設備データ(土地・建物・構築物)

最近傍 (kNN) アルゴリズムで推計を行い、用途地域マッチを 60.2%、kNN 利用率 78.4% を達成しています。 これは「EDINET の数字をそのまま転載」では絶対に作れない、当サイト独自のデリバティブ指標です。

4. PIK・信用ストレス指標の独自計算(false positive 99.3% 削減)

PIK(Payment-in-Kind, 現金で支払われない利息)は、信用悪化の先行指標として注目される指標です。 ただし IFRS では FinanceCostsIFRS が為替差損などを含む広義タグになっており、単純抽出すると 2,106 社が偽陽性となる致命的なノイズが発生します。

当サイトでは狭義の IFRS タグ(jpigp_cor:InterestExpensesIFRS 等)を最優先するロジックを実装し、偽陽性を 2,106 社 → 14 社(-99.3%)まで削減。 さらに 10-K 本文を LLM で解析する補完抽出も組み合わせ、JP 87% / US 55% のカバレッジで PIK 指標を提供しています。

5. AI による定性情報の構造化と引用付き要約

有報本文は数百ページにわたる定性情報を含みますが、ローカル稼働の LLM(大規模言語モデル, Ollama qwen3:14b ベース)を用いて以下を抽出・要約しています。

  • 業績変化要因(前期との売上高・営業利益の差分の原因)
  • 事業リスク 5 件と対応策
  • 研究開発・設備投資のハイライト
  • セグメント別の収益動向
  • 今後の見通し(経営者目線の forward-looking 記述)

全ての要約には原文からの引用を付与しており、ハルシネーション(AI の捏造)リスクをユーザー側で検証可能にしています。 さらに信頼度スコア(XBRL カバレッジ・引用整合性・数値検証・セグメント整合性の 4 軸)を各レポートに付与し、データ品質を可視化しています。

6. 日本・米国・台湾の 3 市場を横断する財務データベース

日本(EDINET)に加えて、米国 SEC EDGAR の 10-K と台湾 TWSE OpenAPI の年次報告書を、同じ KPI セット(売上高・営業利益・ROE・配当・PER 等)に正規化して掲載しています。 会計基準(GAAP / IFRS / J-GAAP)の差異を吸収する変換ロジックを自社で実装しており、日米台の全上場企業を 同一の物差しで比較可能にしている点も他の財務情報サイトとの差別化要素です。

7. 公開前の機械検算と表現ゲート

「AIが読み、機械が検算し、検査に落ちたものは出さない」を方針として、全ページの公開前に自動検査を常時実行しています。

  • 配当性向の全社検算(1株配当 ÷ EPS との一致を全年度で機械照合)
  • 本文の符号記述と実数値の突合(例:「営業CFがマイナス」という記述 vs 実際の営業CF)
  • 前年比のゼロ割り・自己参照(前年比が値そのものと一致するバグ)の検出
  • AIの定型文(謝罪・メタ発話)の検出と除去
  • 評価的表現(売買推奨に当たる表現)の検出ゲート
  • パーサ崩れ(表の連結・原文ヘッダ混入)の検知 — 正しく分離できない表は数値を出さずに非表示にします

上記はすべて自社開発のパイプラインで実装しており、データ抽出の精度向上のため継続的にロジックを改善しています。 手法に関するご質問やフィードバックはお問い合わせからお寄せください。

データの対象範囲・更新頻度

対象企業:東証プライム・スタンダード・グロース市場に上場する日本企業を網羅しています。 ただし財務報告書を提出していない企業、決算期変更中の企業、上場廃止企業は表示対象外となる場合があります。

対象期間:原則として直近6年度分(年次)と直近4四半期分を掲載しています。 古い年度は表示されない場合がありますが、EDINETで公開されている限り順次遡って対応していきます。

更新頻度:EDINETへの新規提出を毎日チェックし、新たな有価証券報告書・四半期報告書が提出された翌営業日以降にサイトに反映されます。 反映までのタイムラグは分析の品質チェックを挟むため通常1〜3日です。

鮮度の目安:各企業ページには「対象年度」と「最終更新日」が表示されます。 速報性を優先する方は証券会社の決算速報等と併せてご利用ください。

AI分析の限界と注意事項

本サイトのAI分析は、有価証券報告書に記載された「過去のデータ」と「企業自身の記述」を元にしています。 以下のような点でAI分析には本質的な限界があり、投資判断の唯一の根拠とすべきではありません。

  • 未来予測ではない:分析は過去の実績に基づきます。将来の株価や業績を予測するものではありません。
  • 会社開示の範囲内:企業が有報に記載していない情報は分析に反映されません。不祥事や内部事情など、非開示情報はカバーできません。
  • ハルシネーションの可能性:LLMは原文にない内容を生成することがあります。信頼度スコアで低評価となっている項目は、必ず原本(EDINET)でご確認ください。
  • IFRS・日本基準の差異:会計基準によって同じ概念(売上高・営業利益など)の定義が異なります。企業間比較の際はご注意ください。
  • セグメント区分の変更:企業はセグメント区分を変更することがあります。過去との連続性が担保されない場合があります。