1. 3社の主要指標サマリー(2025年度)
最新の2025年3月期決算における3社の主要指標を一覧します。
| 企業 | 売上 | 営業利益 | OM | ROE | PER |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン | 2.4兆円 | 7,077億円 | 29.1% | 29.3% | 17倍 |
| アドバンテスト | 7,797億円 | 2,282億円 | 29.3% | 31.8% | 29.6倍 |
| SCREEN | 6,253億円 | 1,383億円 | 22.1% | 23.6% | 9.4倍 |
※ OM = 営業利益率(Operating Margin)。3社すべて営業利益率20%超で、これは日本の上場企業平均5-10%を大きく上回る水準。
2. 売上高の3年推移とV字回復
半導体製造装置業界は典型的なシクリカルで、2024年度に各社減収、2025年度にV字回復という共通パターンを示しています。
| 企業 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| 東京エレクトロン | 2.21兆円 | 1.8兆円 | 2.4兆円 |
| アドバンテスト | 5,602億円 | 4,865億円 | 7,797億円 |
| SCREEN | 4,608億円 | 5,049億円 | 6,253億円 |
2024年度の落ち込みの背景は、半導体メーカー(特にメモリ系)の在庫調整で設備投資が抑制されたことです。 メモリ価格の急落で、サムスン、SKハイニックス、マイクロンが装置発注を絞った影響が表れました。
2025年度のV字回復は、AI半導体(NVIDIA・AMD・Google等向け)のロジック装置需要と、HBM(高帯域メモリ)向け装置の旺盛な需要が支えました。 特にアドバンテストはAI半導体テスト需要の直接受益者で、売上が60%超の急増を達成しています。
3. 営業利益率30%という驚異的水準
3社すべての営業利益率が20%超、東京エレクトロンとアドバンテストは29%超という極めて高い水準です。 これは日本の輸送用機器業界の中央値5%、機械業界の9%、電気機器業界の8%と比較しても突出しています。
この高利益率の理由は、半導体製造装置が「技術的に複雑」「顧客が世界的に少数(TSMC・サムスン・SKハイニックス等)」「代替不可能」という特殊な市場構造にあります。 装置メーカーは高い研究開発投資を行いつつも、限られた顧客との長期パートナーシップで高単価販売が可能です。
また、3社のROEもいずれも23%超と、日本企業平均8%の3倍以上の水準。資本効率の良さも特筆すべき点です。
4. AI半導体需要と装置メーカー
生成AI需要の爆発的拡大により、半導体製造装置業界は2025-2027年にかけて構造的成長期に入っているとの見方が支配的です。
- NVIDIA H100/H200/B200のGPU生産: TSMCの先端ノード(5nm/3nm/2nm)対応で先端装置への投資
- HBM(高帯域メモリ)の構造的需要: NVIDIA GPUの隣に積層されるHBMはSKハイニックス・マイクロン・サムスンが供給
- パッケージング装置の需要拡大: 2.5D/3Dパッケージング(CoWoS等)はTSMCで容量逼迫
- Google TPU・各社AI ASIC向け検査需要: アドバンテストのテスター直接受益
- 中国の国産化投資: 米中対立下で、規制対象外の装置(成膜・洗浄等)の中国需要も継続
ただし、AI需要の中心は「ロジック先端ノード」と「HBM」に集中しており、汎用メモリ・古い世代のロジックは依然として在庫調整局面です。 つまり装置メーカー内でも「AI受益度」によって業績に温度差があり、アドバンテスト>東京エレクトロン>SCREENの順で恩恵が大きいといえます。
5. 装置業界のシクリカル性
半導体製造装置業界は「シリコンサイクル」と呼ばれる景気循環の影響を強く受けます。 過去10年でも、2018-2019年、2022-2023年、2024年に明確な調整局面がありました。
シクリカル業種を見るときの注意点:
- 業績ピーク時のPERは低めに見える(市場が今後の減益を織り込み)
- 業績底打ち時のPERは高くなりがち(赤字または利益低水準を分母にするため)
- 10年平均利益で見るシラーPERや、設備投資サイクル平均PERのほうが本質的
- 自己資本比率の高い銘柄は不況時の耐性が高い(3社とも60%超で安全)
3社の現在のPERは17倍、29倍、9倍と分散しています。SCREENのPER9倍は3社中最割安ですが、これはAI受益度の差を市場が織り込んでいる可能性があります。 アドバンテストの29倍はAI半導体テストの構造的成長性をプレミアム評価したものといえます。
6. 各社の特徴と強み
東京エレクトロン(8035)
世界4位の半導体製造装置メーカー。エッチング・成膜・洗浄・テスト全工程で高シェアを維持。AI半導体向けロジック先端ノードと、急成長中の3D NAND・HBM向け装置で大きな利益貢献。
アドバンテスト(6857)
半導体検査装置(テスター)の世界トップ。NVIDIA向けGPU・GoogleのTPU・各社AIチップのテスト需要が爆発的に拡大。2024年度の業績調整から2025年度はV字回復。
SCREEN(7735)
ウェハ洗浄装置で世界シェア5割超。装置ビジネスのなかでも比較的ニッチで安定収益。3社中で最も低PERかつ高ROEの組み合わせで、相対的に割安と評価されることが多い。
7. データの出典と注意点
本記事の数値はすべて、各社が EDINET(金融庁の電子開示システム)に提出した有価証券報告書のXBRLデータに基づいています。
- 純利益は親会社株主に帰属する当期純利益
- 東京エレクトロンは2024年6月に株式分割(1:3)を実施しており、過去配当との比較には注意が必要
- PERは決算期末日の株価ベース。半導体株は短期株価変動が大きいため現在値とは大きく乖離する可能性
- 半導体業界のサイクルは典型的に2-3年周期。短期業績だけで判断せず長期トレンドを確認
- 本記事は事実分析であり投資推奨ではない