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セクター分析

小売大手4社の業績比較 2026年|セブン&アイ・イオン・ファストリ・ドンキ

日本の小売業界を代表する4社、セブン&アイ・ホールディングス(3382)・イオン(8267)・ファーストリテイリング(9983)・パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)を、 2025年度の有価証券報告書ベースで横断比較します。同じ「小売」でも、業態の違いで利益率には大きな差があります。

公開: 2026-05-21更新: 2026-05-21読了目安: 約6分

1. 4社の主要指標サマリー(2025年度)

企業売上高営業利益率ROEPER
セブン&アイ・ホールディングス338211.97兆円3.1%4.1%32.2倍
イオン82678.83兆円2.5%1.4%109.7倍
ファーストリテイリング99832.06兆円19.5%10.6%
パン・パシフィック・インターナショナルHD75321.21兆円8%9.3%

売上はセブン&アイが11.97兆円で最大。一方、営業利益率はファーストリテイリングが19.5%と突出し、セブン&アイ・イオンの2〜3%とは桁違いです。

2. 「薄利多売」と「高収益SPA」の構造差

この4社の比較で最も重要なのは、売上規模と利益率が逆転している点です。 売上が小さいファーストリテイリングの営業利益率(19.5%)が、売上最大のセブン&アイ(3.1%)の6倍以上あります。

  • 総合小売=薄利多売:コンビニ・総合スーパーは、メーカーの商品を仕入れて売る「仲介業」。粗利率が低く、巨大な売上があっても営業利益率は2〜3%にとどまります。セブン&アイ・イオンがこれに当たります。
  • SPA=製造小売の高収益:ファーストリテイリング(ユニクロ)は、自ら企画・生産した商品を自社店舗で売る「製造小売(SPA)」。中間マージンが発生せず、ブランド価格を維持できるため高収益です。
  • パンパシ=独自業態:ドン・キホーテは「驚安」「圧縮陳列」という独自の店舗体験とインバウンド需要で、総合小売としては高めの利益率8.0%を実現しています。
  • 投資の見方:小売株は「売上ランキング」だけで見ると総合小売が上位ですが、稼ぐ力(利益率・ROE)で見るとSPA・独自業態が優位。規模と収益性を分けて評価することが重要です。

3. 各社の特徴と事業構造

セブン&アイ・ホールディングス3382

売上 11.97兆円/営業利益率 3.1%/ROE 4.1%/PER 32.2倍

売上11.97兆円と小売最大。セブン-イレブン(国内・北米)が収益の柱で、北米コンビニ事業の比率が高い。総合スーパー(イトーヨーカ堂)の構造改革やグループ再編、海外からの買収提案など、事業ポートフォリオの見直しが続く。

イオン8267

売上 8.83兆円/営業利益率 2.5%/ROE 1.4%/PER 109.7倍

総合スーパー、ディスカウント、ドラッグ、金融(イオン銀行)、ディベロッパー(イオンモール)を抱える巨大流通グループ。営業利益率2.5%・ROE1.4%と薄利。連結に多くの上場子会社を持つ複雑な構造で、本体の利益率は低く出る。

ファーストリテイリング9983

売上 2.06兆円/営業利益率 19.5%/ROE 10.6%/PER

ユニクロ・GUを展開するアパレルSPA(製造小売)。売上は小売4社で最小だが、営業利益率19.5%は突出。企画・生産・販売を一貫管理するSPAモデルと、海外(特にアジア)のユニクロ事業の成長が高収益の源泉。決算期は8月。

パン・パシフィック・インターナショナルHD7532

売上 1.21兆円/営業利益率 8%/ROE 9.3%/PER

ドン・キホーテ、ユニー(アピタ・ピアゴ)を展開。「驚安」の独自ディスカウント業態とインバウンド需要の取り込みで、総合小売としては高めの営業利益率8.0%を実現。決算期は6月。連続増収増益を続けてきた成長型小売。

4. よくある質問(FAQ)

Q. 小売大手4社で最も売上が大きいのはどこですか?

A. 2025年度の売上高はセブン&アイ・ホールディングスが約11.97兆円で最大です。次いでイオン8.83兆円、ファーストリテイリング2.06兆円、パンパシフィックHD1.21兆円の順です。

Q. なぜファーストリテイリングは小売なのに営業利益率が高いのですか?

A. ファーストリテイリング(ユニクロ)はSPA(製造小売)モデルで、企画・生産・販売を一貫管理します。これにより中間マージンを抑え、ブランド価格を維持できるため、総合小売(営業利益率2〜3%)と比べて19.5%という高い利益率を実現しています。

Q. セブン&アイとイオンの利益率が低いのはなぜですか?

A. 総合スーパーやコンビニは「薄利多売」のビジネスモデルで、もともと営業利益率が低い業態です。巨大な売上の一方、利益率は2〜3%にとどまります。イオンは上場子会社を多く抱える連結構造の影響もあります。

5. データの出典

本記事の業績数値(売上高・営業利益・ROE)は、各社が金融庁の開示システムEDINETに提出した有価証券報告書のXBRLデータを、金脈コードが独自に抽出・集計したものです。 決算期は各社で異なり、ファーストリテイリングは8月期、パンパシフィックHDは6月期、セブン&アイ・イオンは2月期の本決算ベースです。 PERは1株当たり利益を直近の株価で計算したもので、株価変動により日々変化します。決算期と株価基準日の関係で一部の指標が算出できない場合は「—」と表示しています。データ抽出時点は2026年5月です。 本記事は企業比較を目的とした情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断の最終責任はご自身でお願いします。

日本の小売業界 — コンビニ・GMS・SPA の3軸構造

日本の小売業界は ①コンビニ (セブン-イレブン、ローソン、ファミマ)、②GMS/総合スーパー (イオン、イトーヨーカドー)、③SPA (ファーストリテイリング、しまむら) の3軸を中心に発展してきました。それぞれの業態が市場縮小・人手不足・DX 圧力に直面する中、勝者と敗者の分化が鮮明化しています。 セブン&アイ HD は売上11兆円超で日本小売トップ。米国セブン-イレブン (Speedway 買収で米国コンビニ最大手) で売上の半分を稼ぐ。2024年カナダ Couche-Tard からの買収提案で揺れている。 イオンは GMS (総合スーパー) を中核に、ドラッグストア (ウエルシア)、ディスカウント、金融、ペットなど多角化。売上 11兆円規模。 ファーストリテイリング (ユニクロ) は SPA モデルで世界展開、海外売上比率 50% 超。グローバルアパレルでトップ10入り。 パン・パシフィック・ディベロップメント (ドンキ) は安売り業態で異色の成長、訪日インバウンドにも強い。

業績を左右する論点 — グローバル化・DX・PB

小売セクターの業績を見る論点: ①グローバル化 ファーストリテイリングは海外比率 50% 超で構造的成長、セブン&アイは米国コンビニで規模効果、イオン・ドンキは国内中心。グローバル比率の高さが長期成長を左右。 ②DX (デジタル化) モバイル決済、セルフレジ、AI 需要予測、ロボット導入。セブン-イレブンの「7NOW」(ネット注文配達)、イオンの「iAEON」アプリ、ユニクロのEC比率拡大 (国内30%超) など差別化。 ③PB (プライベートブランド) PB 比率が利益率を左右。セブン「セブンプレミアム」、イオン「トップバリュ」、ファーストリテイリングは全商品 PB。 ④インバウンド需要 ドンキ、ファーストリテイリング (銀座・原宿旗艦店)、コンビニ (24時間対応・多言語) が大きな恩恵。 ⑤再編可能性 セブン&アイへの Couche-Tard 買収提案 (5.5兆円規模) が市場を揺るがしており、小売業界の再編加速の可能性。

小売業界の今後 — グローバル統合とサステナビリティ

中長期トレンド: ①グローバル M&A の進展 - セブン&アイ vs Couche-Tard 攻防 (2024-2026) - イオン、ファーストリテイリングの海外買収拡大可能性 - 日本小売の海外展開は今後 10-20年の主戦場 ②サステナビリティ・ESG - 食品ロス削減 (コンビニ・スーパー) - サステナブル素材 (ユニクロ・無印良品) - 包装・物流の脱炭素化 ③店舗とECの融合 (OMO) - アマゾン・楽天・メルカリとの競争・協業 - 店舗受取、ライブコマース、ライブ配信 - 配送網のラストワンマイル ④人手不足対応 - セルフレジ、自動化、AI 接客 - 高齢者・主婦の活用 - 賃上げ余地ある大手のみ生き残り

小売4社の財務 + 主要事業

各社の業績・主要事業: ①セブン&アイ HD (3382): 売上 11.5兆円、営業利益 5,000億円 - セブン-イレブン (国内 + 米国 7-Eleven)、Speedway (米国) - 米国コンビニで売上の半分 - Couche-Tard 買収提案 (約 5.5兆円) で揺れる - 配当利回り 2%、PER 17-22倍 ②イオン (8267): 売上 11兆円、営業利益 2,500億円 - 総合スーパー、ドラッグストア (ウエルシア)、ディスカウント、金融、ペット - 多業態巨大グループ - 配当利回り 1.5%、PER 25-30倍 (高 PER) ③ファーストリテイリング (9983): 売上 3.4兆円、営業利益 5,300億円、営業利益率 15% - ユニクロ世界ブランド、海外比率 50% 超 - SPA モデルで高利益率 - 配当利回り 1%、PER 30-40倍 (高 PER グロース) - ROE 18-20% ④ドンキ (パンパシHD 7532): 売上 2.2兆円、営業利益 1,300億円、営業利益率 6% - ドン・キホーテ、アピタ、ピアゴ - 訪日インバウンドで売上拡大、米欧アジア展開 - 配当利回り 1.5%、PER 18-22倍 長期投資視点: ファストリ = グローバルブランド、セブン&アイ = 米国 + M&A 期待、イオン = 多業態安定、ドンキ = 訪日恩恵。事業特性で選別。

よくある質問

Q. 小売4社のうち、どれが投資先として最も有望ですか?

A. グローバル成長性ならファーストリテイリング (海外比率 50% 超、ユニクロ世界ブランド)。安定性と再編可能性ならセブン&アイ (Couche-Tard 買収提案で TOB プレミアム期待)。バリュー × 多角化ならイオン (高配当)。各社で投資テーマが異なります。

Q. セブン&アイへの Couche-Tard 買収提案はどうなりますか?

A. 2024年8月に Couche-Tard が約 5.5兆円で買収提案、セブン&アイは複数回拒否しています。創業家伊藤家や日本政府・経産省の反応も焦点。仮に買収成立すれば株価は提案額 (約 2,000円台後半) 水準に、不成立なら現状の株価維持か下落。M&A プレミアムを狙う投資家には注目銘柄ですが、長期化リスクも。

Q. ユニクロの海外成長はまだ続きますか?

A. はい、特に中国・東南アジア・北米で成長余地大。中国はコロナ後の店舗網再構築中、欧州・北米は今後の主戦場。ユニクロブランドはグローバル認知度が H&M・GAP に追いつき、Zara (世界1位) を追う立場。海外比率 50% は更に 60-70% へ拡大する見込みで、長期成長銘柄の代表格です。

Q. コンビニ業界の今後はどうなりますか?

A. 国内コンビニは飽和気味 (5.5万店)、新規出店は減速。今後の成長軸は ①海外 (セブンは米国・東南アジア、ローソンは中国) ②店内コーヒー・揚げ物・冷凍食品の高単価化 ③配達・モバイル決済 ④PB 強化。寡占構造 (3社で 90% シェア) は維持されるが、規模拡大ペースは鈍化。配当狙いや安定収益重視向きの業態となります。