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セクター分析

精密機器・医療機器大手5社の業績比較 2026年|テルモ・オリンパス・HOYA・シスメックス・ニコン

精密機器・医療機器を代表する5社、テルモ(4543)・オリンパス(7733)・HOYA(7741)・シスメックス(6869)・ニコン(7731)を、 2025年度の有価証券報告書ベースで横断比較します。安定した高収益を生む医療機器と、構造転換に苦しむニコンの対比が鮮明です。

公開: 2026-05-21更新: 2026-05-21読了目安: 約6分

1. 5社の主要指標サマリー(2025年度)

企業売上高営業利益率ROEPERPBR
テルモ45431.04兆円15.2%8.6%35.43.03
オリンパス77339,973億円16.3%15.7%18.92.97
HOYA77418,660億円20.8%28.96.01
シスメックス68695,086億円17.2%11.6%333.81
ニコン77317,153億円0.3%1%830.8

テルモ・オリンパス・シスメックスの医療機器3社は営業利益率15〜17%と高収益。一方ニコンは0.3%と際立って低く、同じ「精密機器」でも明暗が分かれます。

2. 医療機器が高収益な理由

テルモ・オリンパス・シスメックスといった医療機器企業が高収益なのには、明確な理由があります。

  • 参入障壁の高さ:医療機器は薬事承認、臨床データ、医師との信頼関係が必要で、新規参入が極めて難しい。一度シェアを握ると安定します(オリンパスの内視鏡シェア約7割が好例)。
  • リカーリング(消耗品)モデル:シスメックスの検査機器のように、機器を売って消耗品(試薬)で継続的に課金するモデルは、安定したストック収益を生みます。
  • ディフェンシブな需要:医療需要は景気に左右されにくく、高齢化で構造的に拡大。安定成長を市場が評価し、PERも高めに付きます。
  • ニコンとの対比:ニコンのカメラ・露光装置はスマホ普及や競争激化で需要が変動する「シクリカル」な性格。同じ精密機器でも、医療機器の安定性とは対照的です。

3. 各社の特徴と事業構造

テルモ4543

売上 1.04兆円/営業利益率 15.2%/ROE 8.6%/PER 35.4倍/PBR 3.03

カテーテルなど心臓血管領域に強い医療機器大手。売上1.04兆円と5社最大。安定した医療需要を背景に営業利益率15.2%。ディフェンシブな医療機器株として、PER35倍と高めに評価される。

オリンパス7733

売上 9,973億円/営業利益率 16.3%/ROE 15.7%/PER 18.9倍/PBR 2.97

消化器内視鏡で世界シェア約7割を握る圧倒的トップ。かつてのカメラ事業を売却し、医療機器に集中する構造転換に成功。営業利益率16.3%・ROE15.7%と高収益。内視鏡という独占的ポジションが強み。

HOYA7741

売上 8,660億円/営業利益率 /ROE 20.8%/PER 28.9倍/PBR 6.01

半導体用フォトマスク基板、HDD用ガラス基板、メガネレンズ、医療内視鏡など。半導体関連の高収益事業を持ち、ROE20.8%・PBR6.01倍は5社で突出。「精密機器」というより半導体・光学の高収益企業として評価される。

シスメックス6869

売上 5,086億円/営業利益率 17.2%/ROE 11.6%/PER 33倍/PBR 3.81

血液検査などの検体検査機器・試薬で世界トップクラス。機器を販売し試薬で継続課金する「リカーリング(消耗品)モデル」が安定収益を生む。営業利益率17.2%と高く、PER33倍と成長株評価。

ニコン7731

売上 7,153億円/営業利益率 0.3%/ROE 1%/PER 83倍/PBR 0.8

カメラ(映像事業)と半導体・FPD露光装置が主力だったが、スマホによるカメラ市場縮小と露光装置競争で苦戦。営業利益率0.3%・ROE1.0%と5社で際立って低調。ヘルスケア・デジタルマニュファクチャリングへの構造転換の途上。PBR0.80倍と1倍割れ。

4. よくある質問(FAQ)

Q. 精密機器・医療機器大手5社で最も収益性が高いのはどこですか?

A. ROEではHOYA(20.8%)が最も高く、営業利益率ではシスメックス(17.2%)・オリンパス(16.3%)・テルモ(15.2%)が高水準です。医療機器・半導体関連の高付加価値事業が収益性を支えています。

Q. オリンパスの強みは何ですか?

A. オリンパスは消化器内視鏡で世界シェア約7割を握る圧倒的トップ企業です。かつてのカメラ事業を売却し、医療機器に集中する構造転換に成功しました。

Q. ニコンの業績が低調なのはなぜですか?

A. スマートフォンの普及によるカメラ市場の縮小と、半導体露光装置での競争激化が背景です。2025年度は営業利益率0.3%・ROE1.0%と低調で、ヘルスケア等への構造転換の途上にあります。

5. データの出典

本記事の業績数値(売上高・営業利益・ROE)は、各社が金融庁の開示システムEDINETに提出した有価証券報告書(2025年度の本決算)のXBRLデータを、金脈コードが独自に抽出・集計したものです。 PER・PBRは1株当たり指標を直近の株価で計算したもので、株価変動により日々変化します。データ抽出時点は2026年5月です。 一部の指標は会計基準や開示区分により算出できない場合があり、その際は「—」と表示しています。 本記事は企業比較を目的とした情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断の最終責任はご自身でお願いします。

日本の精密機器・医療機器業界 — 世界トップシェアの宝庫

日本の精密機器・医療機器業界は世界市場で高いシェアを持つ「隠れたグローバル企業」が集中する分野。 テルモ (1921年創業) は注射針・カテーテル・心臓血管系治療機器で世界トップクラス、海外売上比率 70% 超。オリンパスは内視鏡で世界シェア 70% 独占、消化器内視鏡分野では圧倒的優位。HOYA は半導体マスクブランクス・眼鏡レンズ・コンタクトレンズで世界トップ。シスメックスは血球計数器で世界シェア 30% (No.1)。ニコンはカメラから半導体露光装置・医療機器へ事業転換中。 業界の特徴は ①高い技術障壁による寡占、②グローバル展開で為替・地政学リスクあり、③R&D 投資負担が大きい、④高利益率 (営業利益率 15-25%) と高 ROE。

業績を左右する論点 — グローバル展開・規制対応

①世界シェアの強さ 高シェア企業 (オリンパス内視鏡70%、HOYAマスクブランクス、シスメックス血球計数器) は価格決定力高い。シェア低下リスクの少ない銘柄を選別。 ②医療機器の特殊性 医療機器は ①規制承認 (FDA、PMDA) で参入障壁高い ②長期保証・サポートで継続収益 ③医療従事者の使い慣れで切替コスト高い → 安定収益源。 ③R&D 投資 売上の 5-8% を R&D 投資。継続的な新製品で競争優位維持。 ④為替リスク 海外売上比率高い (60-80%)、円安は短期業績にプラス、円高はマイナス。 ⑤地政学・規制 中国市場 (大きな成長ドライバー) の規制変動、米国 FDA 規制強化対応コスト。

精密・医療機器業界の今後 — AI・低侵襲治療・グローバル化

中長期トレンド: ①AI 統合 - AI 内視鏡 (病変検出補助、オリンパス先行) - AI 画像診断 (CT、MRI) - AI 病理診断 (シスメックス血球計数器も AI 対応) ②低侵襲治療 - カテーテル治療 (テルモ世界トップ) - ロボット手術 (Intuitive Surgical 独占を追う日本勢) - 内視鏡治療 (オリンパス) ③グローバル化 - 米国市場 (世界最大、最高単価) - 中国市場 (高齢化で急成長中) - インド・東南アジア (中間層拡大) ④M&A・事業ポートフォリオ再編 - オリンパスのカメラ撤退、医療機器特化 - ニコンのカメラ事業縮小、半導体・医療シフト - HOYAの戦略的事業選別

精密・医療機器5社の財務サマリー

各社の業績: ①テルモ (4543): 売上 9,000億円、営業利益 1,600億円、営業利益率 18% - カテーテル、心臓血管、人工心肺、輸液 - 海外比率 70%、ROE 12-15% - 配当利回り 1%、PER 25-30倍 ②オリンパス (7733): 売上 9,500億円、営業利益 1,800億円、営業利益率 19% - 消化器内視鏡世界 No.1 (シェア 70%)、医療治療機器 - カメラ撤退、医療特化 - 配当利回り 1%、PER 25-30倍 ③HOYA (7741): 売上 9,000億円、営業利益 3,500億円、営業利益率 40% (超高収益) - マスクブランクス (半導体)、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、医療機器 - 配当利回り 1%、PER 25-30倍、ROE 20% 超 ④シスメックス (6869): 売上 4,500億円、営業利益 800億円 - 血球計数器世界 No.1 - 配当利回り 1.5%、PER 25-30倍 ⑤ニコン (7731): 売上 7,500億円、営業利益 400億円 - カメラ → 半導体露光装置 + 医療機器シフト - 配当利回り 3%、PER 13-17倍 長期投資視点: HOYA とオリンパスが高収益代表、テルモとシスメックスが安定型、ニコンが事業転換途中。グローバルニッチトップは長期保有の優良候補。

よくある質問

Q. 精密・医療機器セクターの収益構造の特徴は?

A. ①世界シェアの高いニッチトップが多い ②薬事規制が参入障壁として働き収益が安定しやすい ③高利益率 ④円安局面では為替メリット、という特徴があります。テルモ・オリンパス・HOYA・シスメックスは「グローバルニッチトップ」の代表格とされます。

Q. オリンパスの内視鏡シェア70%は持続しますか?

A. 中長期的には持続性高い。①医療機関の切替コスト高 (医師の使い慣れ、教育コスト) ②継続的な新製品 (AI 内視鏡、4K) ③米国市場での FDA 承認実績。脅威は ①Hoya / 富士フイルムなどの追い上げ ②中国メーカーの台頭。シェア80% → 70%へ若干低下しているが、依然圧倒的優位。

Q. ニコンのカメラ事業はどうなりますか?

A. カメラ事業は縮小・採算重視へシフト中。ニコンの戦略は ①スマホで代替できない高機能カメラ (Z シリーズミラーレス) に特化 ②利益率改善 ③半導体露光装置 + 医療機器への事業ポートフォリオ転換。カメラ事業を見るより「半導体・医療」での新展開を見るのが投資判断です。

Q. テルモの強みは?

A. 注射針・カテーテル・人工心肺装置で世界トップクラス。特に ①血液浄化システム ②心臓血管インターベンション (経カテーテル弁置換術 TAVR) ③CAR-T 細胞療法装置 でグローバル展開。海外売上比率 70% 超、ROE 12-15%、安定成長で長期保有候補。