1. なぜ2社あるのか・親子関係の整理
混乱の元は、2018年に行われたソフトバンクグループの通信事業子会社上場にあります。 それまで非上場だった通信事業(旧 ソフトバンク株式会社)を、 親会社のソフトバンクグループ(9984)が東証一部に分離上場させ、 証券コード9434のソフトバンクが新たに誕生しました。
現在の構造は次のようになっています:
- ソフトバンクグループ(9984・親会社): 投資会社として9434のソフトバンクを約40%、Arm・PayPayなどグローバルテック企業多数を保有
- ソフトバンク(9434・子会社): 通信・IT事業会社として独立経営。Yahoo!・LINE・PayPayも含む
- 業種分類が違う: 9434は「情報・通信業」、9984は「その他金融業」
検索結果でも、「ソフトバンク 配当」と入力すると両社が混在して表示されるため、 読者の意図によって参照すべき銘柄が異なります。
2. 2社の主要指標サマリー(2025年度)
最新の2025年3月期決算を、有価証券報告書ベースで一覧します。
| 企業 | 分類 | 売上 | 純利益 | ROE | PER | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ソフトバンク (9434) | 情報・通信業(事業会社) | 6.5兆円 | 5,261億円 | 12.3% | 18.9倍 | 26.5% |
| ソフトバンクグループ (9984) | その他金融業(投資会社) | 7.2兆円 | 1.2兆円 | 8.3% | 9.6倍 | 31% |
※ 売上規模は両社とも6-7兆円台で近いものの、事業内容と収益構造はまったく異なる。
3. ソフトバンク(9434): 通信事業の安定収益
9434のソフトバンクは、日本の3大携帯キャリアの1つで、楽天モバイル進出後の競争激化下でも安定した利益体質を維持しています。
事業セグメントは大きく次の4つ:
- コンシューマ: 携帯電話、固定通信(光ファイバー)、電気販売
- エンタープライズ: 法人向け通信・クラウド・セキュリティ
- ディストリビューション: ソフトバンクC&Sを通じたITプロダクト販売
- メディア・EC: Yahoo!・LINE・PayPay・ZOZOなどLINEヤフー連結
2025年度の業績は売上6.5兆円、営業利益9,890億円、純利益5,261億円。 営業利益率15.1%・ROE 12.3%は通信業界の中でも上位水準です。 自己資本比率は26.5%とやや低めですが、これは通信業特有の長期借入による設備投資に起因します。
4. ソフトバンクグループ(9984): AIブームでV字回復
9984のソフトバンクグループは事業会社ではなく投資会社です。 主な保有資産は次のとおりです:
- ソフトバンク(9434): 約40%保有・連結子会社
- Arm Holdings(米英NASDAQ上場): 約90%保有・半導体IP最大手
- Vision Fund 1・2: 世界中のテックスタートアップ数百社に投資
- PayPay・LINEヤフー: 国内デジタル決済・サービス
業績は保有テック株の時価評価変動で大きく振れる構造です。
- 2023年度: 純利益−9,701億円(テック株調整)
- 2024年度: 純利益−2,276億円(緩やか調整)
- 2025年度: 純利益+1.2兆円(AIブームでArm時価10倍)
2025年度の急回復は、ARM上場(2023年9月)以降の同社株価が約10倍に上昇したことや、 NVIDIA等のAI関連株保有による評価益が主因です。 PERは9.6倍と低めですが、これは「投資会社」の評価が難しいことを反映しています。
5. 配当政策の根本的違い
両社の配当政策はまったく異なります。
| 企業 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 方針 |
|---|---|---|---|---|
| ソフトバンク(9434) | 85円 | 85円 | 86円 | 配当性向85%目処・累進的 |
| ソフトバンクG(9984) | 48円 | 44円 | 44円 | 業績連動で変動・赤字でも実施 |
ソフトバンク(9434)は通信事業のキャッシュフロー安定性を背景に、 配当性向85%程度を目処に高配当を維持。85-86円で3年連続のほぼ横ばい。 配当利回りは4-5%台と通信業界でも高水準です。
ソフトバンクグループ(9984)は2023〜2024年度に赤字を計上しながらも配当を継続。 ただし2023年度48円→2024年度44円と微減しており、業績連動性も持っています。 配当性向は赤字下では計算できませんが、内部留保からの配当維持という方針が読み取れます。
6. どちらに投資するか
ソフトバンク(9434)に向く投資家
- 安定配当を求める長期投資家
- 5G・FTTHなど通信需要の伸びを取り込みたい
- Yahoo!・LINE・PayPayの国内デジタル経済
- 業績変動の小さい銘柄を好む
ソフトバンクグループ(9984)に向く投資家
- AI・テック株の急成長を間接的に取り込みたい
- Arm・OpenAI・Coupangなど世界的テック株
- 業績の大きな変動を受け入れられる
- NAV(純資産価値)割引取引の妙味を狙う
両社とも「ソフトバンク」という名前を共有していますが、投資判断軸はまったく違います。 通信事業の安定キャッシュフローを買うなら9434、グローバルテック投資のリターンを狙うなら9984です。
7. データの出典と注意点
本記事の数値はすべて、各社が EDINET(金融庁の電子開示システム)に提出した有価証券報告書のXBRLデータに基づいています。
- 純利益は親会社株主に帰属する当期純利益
- ソフトバンクグループ(9984)の業績は保有株式の評価益・評価損の影響を強く受ける
- 9984は2023〜2024年度の赤字で配当性向算出不能のためPERは「N/A」
- 会計基準: 両社ともIFRSを採用
- 本記事は事実分析であり投資推奨ではない