PMI(Purchasing Managers' Index:購買担当者景気指数)は、企業の購買担当者に対するアンケート調査をもとに算出される景気指標です。新規受注、生産、雇用、配達時間、在庫の5項目を総合したもので、製造業PMIとサービス業PMIがあります。S&P Global(旧IHS Markit)やISMが月次で公表しています。
計算式
PMI = 各項目の「増加」回答割合 + 各項目の「変わらず」回答割合 × 0.5
見方・判断基準
PMIは50を基準値とし、50を上回れば景気拡大、下回れば景気縮小を示します。景気の先行指標として知られ、GDPや鉱工業生産指数より1〜2ヶ月早く景気の転換点を示すことが多いです。
実際の使い方
グローバルに統一された手法で算出されるため、各国の景気を横比較できます。米国ISM製造業PMIは特に注目度が高く、50を大きく上回ると株式市場にポジティブ、50を割り込むとネガティブな影響を与えることがあります。
注意点
PMIは景況感(センチメント)を反映するため、実際の生産量や売上高とは乖離することがあります。また、50は「前月比横ばい」を意味し、50以下でも「悪化のペースが鈍化」していれば景気改善のサインとなる場合があります。
PMI の起源とグローバル景気の先行指標
PMI (Purchasing Managers' Index, 購買担当者景気指数) は、製造業・サービス業の購買担当者を対象としたアンケート調査に基づく景気指標です。「先月と比較して悪化・横ばい・改善」の3択回答を集計し、50を境に景気の良し悪しを判定します。
PMI の起源は 1948年の米国 ISM (Institute for Supply Management) で、米国における製造業の景況感を測る指標として始まりました。1990年代以降、英国の Markit (現 S&P Global) が世界の主要国・地域に展開し、現在では 40カ国以上で発表されています。
景気の先行指標として最も注目される理由:
①速報性: 月初の発表で前月分の景況感が得られる (GDP より 2-3ヶ月早い)
②グローバル一貫性: 同じ手法で 40カ国以上を比較可能
③センチメント反映: 数字だけでは捉えられない経営者の体感を反映
④構造変化への即応性: 急変を最も早く捉える指標
米国 ISM 製造業 PMI、欧州 PMI、中国 PMI (官製・財新の2系統)、日本 PMI などが市場で最も注目され、発表日は世界の株式・為替・債券に影響を与えます。
PMI 50の境界線の意味と業種別の見方
PMI = 50 が経済の「拡大・縮小」の境界線:
- 50 超: 経済活動が前月より拡大 (回答者の過半数が "改善" 回答)
- 50 = 横ばい
- 50 未満: 経済活動が前月より縮小
通常の景気水準では:
- 53-55: 健全な拡大、株式買い
- 55-60: 強い拡大、加速的成長
- 60超: 過熱気味、インフレ懸念
- 48-50: 減速、警戒
- 45-48: 縮小、株式売り圧力
- 45未満: 景気後退レベル
PMI の構成要素 (米国 ISM 製造業):
①新規受注: 景気の最先行指標
②生産: 当期の実体生産動向
③雇用: 労働市場と消費への波及
④納入遅延: 供給網の逼迫度
⑤在庫: 需給バランス
新規受注 PMI が 50 を割り込むと、3-6ヶ月先の生産・雇用低下を予測。
納入遅延が悪化 = 供給網逼迫 → インフレ圧力
製造業 PMI とサービス業 PMI の合成版「コンポジット PMI」が GDP に最も近い指標とされ、市場で重要視されます。
米国 ISM 製造業 PMI と世界株式市場
米国 ISM 製造業 PMI (毎月1日に米時間 10:00 発表) は世界の金融市場で最も注目される景気指標の一つです。
歴史的影響度:
・1990年以降のリセッション (景気後退期) の 80% で、ISM 製造業 PMI が 50 を 6ヶ月以上連続で下回った後に発生
・2008年リーマンショック直前: ISM PMI は 30 台まで急落
・2020年コロナ禍: 41 まで急落
・2022年: 75-80 のピークから 50 割れへ急減速 (利上げ局面)
市場への影響:
- ISM 50 超 = 株式リスクオン: グロース株、半導体、商社買い
- ISM 50 割れ = 株式リスクオフ: ディフェンシブ、債券買い
- ISM 急減速: FRB の利下げ期待 → 株式買い (悪材料 = 好材料)
- 中国 PMI 急悪化: グローバル景気減速懸念、コモディティ売り
日本市場への波及:
- 米国 ISM PMI 急落 → 日本の輸出企業 (自動車、機械) 株安
- 中国 PMI 改善 → 日本の中国ビジネス保有企業 (商社、化学) 株高
- 欧州 PMI 改善 → 日本の対欧州輸出企業 (自動車、機械) 株高
東京市場の朝方の動きは、前夜の米国 ISM PMI 発表結果に大きく左右されます。
PMI の落とし穴
①センチメント vs 実体の乖離
PMI は経営者の "感覚" を測るため、実際の生産量・売上とは乖離することがある。実体経済の判断には IIP・小売売上高など客観指標と併用が必要。
②「悪化のペース鈍化」も改善
PMI が 45 → 48 に上昇しても、50 以下なので「縮小継続」だが、市場では「縮小ペースが鈍化 = 底打ち期待」として買いに反応するケースあり。
③季節調整の影響
PMI は通常季節調整済みで発表されるが、調整方法により数字が変動。季節要因 (年末年始、夏休み) の影響を考慮する必要あり。
④国・調査機関による差
米国: ISM (公式) と Markit (民間) の 2系統。中国: 官製 PMI と財新 PMI (民間)。両者で 1-2 ポイントの差が出ることがあり、注意が必要。
⑤回答者バイアス
同じ会社の購買担当者が継続的に回答するため、回答者の主観が反映される可能性。短期的な数値変動より、3ヶ月平均などのトレンドで評価。
⑥業種偏り
製造業 PMI は調査対象企業の業種構成により、自動車・半導体に偏る可能性。業種別 PMI (例えば米国 ISM の業種別) で実態を補完。
投資戦略における PMI の活用
**マクロトレーダー視点**
- 米国 ISM PMI 月初発表 → 当日の S&P 500 ・10年債利回り・ドル円の方向性決定
- PMI 予想を上回る → 株式買い、債券売り、ドル買い
- PMI 予想を下回る → 株式売り、債券買い、リスクオフ
- 中国 PMI (月末・月初の2回) → 商品市況・新興国通貨に影響
**長期投資家視点**
- PMI 50 を 3ヶ月連続割り込む → ポートフォリオをディフェンシブ寄せ
- PMI 50 を 3ヶ月連続超え → グロース・景気敏感セクター比率引き上げ
- 主要国 PMI の同時改善 → グローバル景気拡大、リスクオン
**個別企業視点**
- 自動車 (トヨタ・ホンダ): 主要市場の PMI 動向で需要予測
- 商社 (5大商社): グローバル PMI でコモディティ価格予測
- 機械 (ファナック・キーエンス): 設備投資循環の先行指標として
- 海運 (日本郵船・商船三井): グローバル PMI で荷動き予測
PMI は「景気の先行指標」として最も実用的な指標の一つです。短期トレードでは発表日のサプライズ、長期投資ではトレンドの確認に使うのが定石です。
よくある質問
Q. PMI と鉱工業生産指数 (IIP)、どちらを重視すべきですか?
A. 速報性と網羅性で使い分け。PMI: 月初発表で速報性高い、グローバル比較可能、センチメント反映。IIP: 月末発表でやや遅行、実際の生産量を客観測定、業種詳細あり。投資判断では PMI で景気サイクルの転換点を察知し、IIP で実態を確認するという二段階のアプローチが推奨されます。
Q. なぜ PMI 50 が境界線なのですか?
A. PMI は「前月比で改善」「横ばい」「悪化」の3択回答を集計し、改善回答比率 + 横ばい回答比率の半分 で計算するためです。50 は「改善と悪化の回答が均衡」する点で、経済活動が拡大か縮小かの境界。50.0 は理論的な「成長中立」点を意味します。
Q. 中国 PMI の官製と財新の違いは何ですか?
A. 官製 PMI (国家統計局): 大企業中心、国有企業比率高い、政策影響を受けやすい。財新 PMI (民間調査): 中小企業中心、輸出関連企業比率高い、市場の実態を反映しやすい。両者で 1-3ポイントの差が出ることがあり、両方を見比べることで中国経済の全体像を把握します。財新 PMI が官製より低い時期は、中小企業・輸出企業の苦戦を示唆。
Q. PMI 急落で株式市場はどう反応しますか?
A. 基本的にはリスクオフ売り。①景気減速 → 企業業績悪化見通し ②金融政策の緩和期待 (悪材料 = 好材料反応) ③クレジットスプレッド拡大 (社債売り、リスク資産売り) ④為替: 安全通貨 (円・スイスフラン) 買い、新興国通貨売り。ただし PMI 50 割れがすでに織り込まれていれば、発表時の動きは限定的。逆に「予想以上の悪化」は強い売り反応を引き起こします。